症例13:大伏在静脈グラフト採取後の傷
80歳男性、糖尿病と慢性腎不全あり血液透析中。狭心症のため10月5日に冠動脈バイパス術を受けられました。冠動脈(心臓を養う大事な血管)のつまりか けた部位をバイパスして血を流す手術で、バイパス用の血管として両足の太い静脈(大伏在静脈)を切り取って使われました。心臓の経過は良好でしたが、足の 血管採取部の傷が1ヶ月半以上たっても良くならないため11月24日受診されました。
大伏在静脈採取後の傷が治らない患者さんは以前にも治療したことがあります。もともと血流がそれほど良い部位ではなく、さらに静脈を取っ てしまうのでうっ血が起こりやすく、治りづらい傷のようです。気長に治療していく必要があります。特に糖尿病と腎不全という傷が治りにくい条件の患者さん ではなおさらです。この患者さんはそういった事情をよくご理解いただけて、長い治療に付き合っていただけました。
この患者さんのように、かさぶたが食い込んだような状態だと外からなにをしても治りことはありません。まずは異物であるかさぶたの除去が第一です。自身の 体内からの水分でふやけて融けていきますので、麻酔をして切ったりする必要はありません。また、治りが不自然に遅い場合は異物の存在を疑う必要がありま す。この患者さんでも治りが悪いところをピンセットで探ると糸が出てきました。
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医