症例9:幼児の手のひらのやけど
1歳女児。12月18日にストーブの天板に触ってしまい左の手のひらをやけど。入院して治療の必要があり、植皮も必要かも、と近くの病院で言われて相談にこられました。
初診時はガッチリ固定した上に包帯でぐるぐる巻きのいわゆる「ドラえもんの手」状態でした。
患者さんは最初は怖がって泣いていましたが年が明ける頃にはノリノリでニコニコして受診していただけました。
1歳6ヶ月未満の手のひらのやけどは湿潤治療をしても瘢痕拘縮(痕が固くなって縮んだようになり指が伸ばせなくなる)が起きるとされています。今回も最初に十分ご説明をして治療を開始しました。幸いほとんど拘縮なく治癒しました。
以下は新しい創傷治療の夏井先生の説明です。
- 1歳6ヶ月未満の場合には,湿潤治療をしても瘢痕拘縮(指の伸展障害)が発生する
- 拘縮の程度にもよるが,上皮化が完了してから数ヶ月~数年で指を伸ばす手術が必要になる
- その手術はZ形成がメインとなり,必要であれば皮膚移植も行う。
- しかし,この場合の皮膚移植の面積は通常1~2センチ程度と小さい。
- 皮膚移植をしても指の伸展障害は必発で,結局その修正手術が必要になる。湿潤治療のメリットは全身麻酔の手術の回数を一回減らせ,採取皮膚の面積を最小限にできることにある。
- 手術は大学病院の形成外科で行うが,手術をきちんとしてあれば,術後に消毒されても害はなく,創面の乾燥も気にする必要はない。
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医