症例20:炎によるやけど(4年後の写真あり)

50代男性。焼却炉で作業中に急に炎が上がり、腕まくりをしていた両前腕と顔に炎が当たり、服の首元に火がついてやけどをされました。病院に入院され、顔はワセリン、腕はワセリンとくっつかないシートとガーゼで治療され、退院されてからの治療を当院で希望され5月10日に受診されました。

5月10日の右前腕。

やや深めの2度熱傷です。ワセリンとくっつかないシートでの湿潤治療だったので経過は良好でした。水疱膜がかなり残っていました。

水疱膜をできるだけ除去しました。浸出液はかなり減っている時期でしたのでワセリン付きプラスモイストで覆いました。
5月10日の左前腕。

同じく2度の熱傷です。水疱膜がかなり残ったままでした。

水疱膜をできるだけ除去し、ワセリン付きプラスモイストで覆いました。
5月10日の顔面。

腕より炎から遠かったようでごく浅い2度熱傷で済んだようです。日焼け後のような感じで一皮むけてほぼ治癒されていました。

耳に一部やけどが残っていましたので、こちらはハイドロコロイド(デュオアクティブET)で覆いました。
5月10日の頸部。

服に火がついたため深めの火傷になっています。赤いところは2度で治りかけですが、その横の白っぽいところは3度熱傷です。こちらもプラスモイストで覆いました。

5月11日の右前腕。

急速に改善しています。どんどん上皮がはっていっています。

5月11日の左前腕。

こちらも急速に上皮化しています。

前腕の拡大写真です。白い点々は毛穴から上皮細胞が増殖して広がっているところです。こうなると一気に治癒に向かいます。

やけどの際に毛穴の深さまで及んでいなければ、毛穴の奥で生き残った上皮細胞がこのように増殖して早く治ります。

耳のやけどもほとんど治りました。
首元のやけども2度の部分はほぼ治りました。

白っぽい3度の部分はしばらく時間がかかります。

翌日より遠方へ行かれるとのことでご自身での処置を指導しました。

5月15日の右前腕。

治癒していました!

乾燥予防のワセリンをしばらく塗り、長袖の服で保護してもらいます。

同じく左前腕。治癒しています。
顔面もほとんど火傷の痕が分からなくなりました。
首元の3度熱傷も白い壊死組織がとけてきて、下からピンクの肉芽が見えてきました。ここだけはワセリン付きプラスモイスト継続です。

後はご自身の処置で十分と考え一旦終診としました。

5月25日に右の手の甲をぶつけたら皮膚がめくれたとのことで受診されました。

手袋はされていたそうですが、再生したてで皮膚が弱い状態ですので注意が必要です。

めくれた皮膚を伸ばしてテープ固定し、プラスモイストを当てました。

右前腕。

全体的にはかなり普通になっています。

左前腕。

こちらもかなり普通の皮膚に近くなっています。

首元の3度熱傷。

こちらも治癒していました。

4年2ヶ月後の右前腕。

やけどの痕はほぼわかりません。

4年2ヶ月後の左前腕。

こちらもやけどの痕はほとんどわかりません。

火焔によるやけどはお湯などに比べて温度が桁違いですので重症になりやすいです。
この患者さんでは腕と顔は炎が一瞬なめただけですが、腕の方はわりと深めのやけどになりました。首元には火がついてしまったため一番深い3度熱傷になりました。
皮膚の奥深くまで傷害されなければ、たくさんある毛穴から一気に上皮細胞が増殖してくれるので治りだすと早いです。
深くまで傷害された3度熱傷では時間がかかりますが、湿潤治療を根気よく続ければ自宅での処置で十分治ります。