症例40:バイクのマフラーによる3度熱傷

39歳男性。9月6日にバイクで転倒、下敷きになり右のふくらはぎをマフラーでやけどされました。自力で脱出できず、助けが来るまで下敷きになったままだったそうです。左下腿と右肘にも擦り傷を負いました。近くの病院で消毒と軟膏の治療を受けていましたが、皮膚移植が必要かもと言われ、9月12日に当院を受診されました。

9月12日初診時。

右ふくらはぎの後ろ側に大きなやけどがありました。いわゆる羊皮紙状の状態で3度の火傷です。

まずは壊死組織が溶けやすいように切れ目を入れました。こうすると浸出液が表に出やすくなりますので痛みが軽くなり、壊死組織が融けやすくなります。ワセリン付きプラスモイストで覆いました。毎日シャワーで流して貼り替えてもらいます。立ち仕事をすると痛みが出やすいのでできるだけ安静にするようにお願いしました。

その他の部分は普通の擦り傷でしたのでプラスモイストやデュオアクティブETで覆いました。

  9月19日。

壊死組織がふやけて融けてきています。

  同じく9月19日。

痛みなく取れる範囲の壊死組織を除去しました。

立ち仕事をしていると痛むとのことでした。プラスモイスト処置を継続してもらいました。

  9月29日。

壊死組織はかなり自然に融けてなくなっていました。まだ立ち仕事中は痛むそうでした。

浸出液が多く漏れそうになるとのことで、吸収力の高いズイコウパッドでの被覆にしました。

  10月6日。

壊死組織は更になくなり、肉芽が覆っています。ズイコウパッド継続。

痛みは仕事終わり頃だけになったそうでした。

  10月27日。

壊死組織はなくなり、肉芽で覆われています。黄色いのはフィブリンという蛋白の膜です。

痛みは時々ある程度になったそうです。

       11月10日。

周辺からだんだん治り始めています。処置は継続です。

11月28日。

肉芽が少し盛り上がり気味です。

このあと12月22日に写真を取りそこねましたが肉芽が盛り上がりすぎたのでリンデロンV軟膏を塗るようにしてもらいました。

1月16日。

リンデロンで肉芽が平坦になりどんどん上皮化が進みました。

中心部はまだ盛り上がっておりリンデロンを継続してもらいました。

2月28日。

かなり良くなりましたが、中心部は肉芽が盛り上がったままでした。リンデロンをしっかりつけるようにしてもらいました。

4月2日。

あと一息というところまで治りました。中心部は肉芽が盛り上がっているせいで治りきれておらず、リンデロンを継続してもらいました。

5月28日。

完全に上皮化、治癒しました。

特筆すべきは、再生した皮膚にきちんと感覚があることです。

高温のマフラーに長時間接触した3度熱傷です。通常なら皮膚移植の対象なのでしょうが、湿潤治療なら時間はかかりますが入院不要、通院も2週に1回程度で仕事をしながら治ります。皮膚移植をするなら入院の上、体の他の部分に傷をつけて皮膚を採取する必要があり、更に移植された皮膚は湿潤治療と違い感覚は戻りません。