2020年12月発行ニュースレター第34号「冬場のかゆみについて」

冬になると体がかゆくなって困っている方から相談があります。発疹もなく、背中やお腹、太ももなど広範囲にかゆみが出るのは「皮脂欠乏性瘙痒症」です。年齢とともに皮脂の分泌が低下していき、冬場の乾燥した空気により皮膚が乾燥してかゆみが起きます。

正しいスキンケアと生活習慣を行えば、あとは軽めの薬で改善します。


皮脂は皮膚の大事なバリヤー

皮膚は汗腺から分泌される皮脂に覆われています。皮脂は皮膚からの水分の蒸発を防ぎ、善玉菌の餌になって皮膚を健康な状態に保ってくれています。皮脂がなくなると皮膚は乾燥して細かな傷がつきやすくなり、悪玉菌が増殖してしまいます。結果として肌荒れが進み、かゆみが起きます。

お風呂で洗いすぎない

高齢になるほど皮脂の分泌は低下しますので、少ない皮脂を大切にする必要があります。人の体の汚れはシャワーを浴びたり湯船に使ったりするだけでほとんど落ちてしまうと言われており、ナイロンたわしでゴシゴシこすったりすると皮脂が取れすぎるだけでなく小さな傷もできてしまい最悪です。臭いが気になるようなところだけ、少量の石鹸で手で洗うだけにするのが正しい入浴法です。

皮脂の代わりの油分を補う

高齢になるとどうしても自前の皮脂だけでは乾燥を防げません。保湿剤を使いたくなるところですが、処方薬も市販薬も保湿剤と銘打っている商品はかえって乾燥を促進するインチキ商品ばかりです。純粋な油でできている保湿剤だけが皮脂を補うことができます。よく見かけるものでは、ワセリン、馬油、スクアレン(スクワレン)になります。スクアレンは皮脂の主要な成分そのもので、馬油も善玉菌の餌になる成分が多いです。これらが含まれる製品でも、白いクリーム状に加工してあるものは逆効果になるので使わないでください。

皮膚への刺激を避ける

毛の下着などはチクチクと皮膚に刺激を与えますのでかゆみの原因になります。木綿が一番です。

爪を立てて掻いたり、孫の手で強く掻いたりすると皮膚が傷ついてもっと痒くなります。無意識に掻いてしまうので爪は短く切り、孫の手の先にはガーゼを巻くなどして優しく掻くようにしましょう。

院長からもう一言

これまでワセリン押しでしたが、皮脂を補うという点ではスクアレンがサラッとして使い心地が良いです。安いもので十分です。手荒れの保護にはやはりワセリンが良いと思います。

PDF版はこちら→第34号202012