症例80「湯たんぽによる下腿の低温やけど」

33歳女性。3月9日に湯たんぽで左下腿に低温やけどを受傷されました。近くの皮膚科に通院されましたが良くならず、切開をされましたがとても痛かったそうです。4月13日当院を受診されました。

4月13日。

壊死組織に切開が入れてありますが、乾燥してかちかちになっており、このままだといつまでたってもこのままです。

ワセリンを塗ったプラスモイストで被覆しました。こうするとせっかした部分から出てくる浸出液で壊死組織がふやけて溶けていきます。

4月22日。

壊死組織はふやけて溶けて消えていっています。

痛みもかなり改善していました。

5月1日。

ピンク色の肉芽が上がってきています。

痛みは少しある程度になりました。

5月15日。

肉芽の上に黄色い膜がはった状態です。黄色い膜は浸出液の蛋白が固まったものです。

6月3日。

肉芽が平坦になってきており、これから周りから上皮化していきます。

6月27日。

やや足踏み状態ですが改善はしており、処置を継続してもらいました。

ここで一旦自分で処置されるとのことで通院終了しました。

11月21日。

治っているか見てほしいと来院されました。

すっかり治っていましたが乾燥が強く、ワセリンなどで保湿するようにしてもらいました。

低温やけどはゆっくりと皮膚の奥深くまで熱が浸透するので、殆どの場合皮下組織まで壊死する3度のやけどになります。浅い2度の水ぶくれの皮は壊死した表皮で簡単に取れますが、3度のやけどの壊死した真皮や皮下組織は自然には取れません。壊死した組織は異物と同じですので、石が食い込んだケガのような状態になります。異物を除去しないと傷ややけどは治りませんので、積極的に壊死組織を取り除くようにしないといけません。

この患者さんでは低温やけどを受傷してから1ヶ月以上たってやっと壊死組織に切開を入れてもらえました。本来やけどが3度であると判断した時点で速やかに切開を加えて湿潤治療で壊死組織を溶かして除去すべきでした。壊死組織がずっと残っていると周囲の生き残った組織にも悪影響を及ぼし、その後の治癒が遅れてしまいます。