症例87「下腿の深い外傷」

69歳女性。受診前日にコンクリートのベンチに右足をぶつけてすねを怪我されました。

5月27日。右下腿に傷がありました。

ゾンデで深さを調べると1.5cmくらいありました。

開口部が小さくておくが深い傷は感染を起こす可能性が高く、こより状にしたナイロン糸を挿入して固定し、ドレナージ(傷の奥の液体などを外に出すこと)を行いました。

上からはプラスモイストで被覆し浸出液を吸収させます。

6月7日。

6月1日までは毎日傷の内部を洗浄に通院してもらっていましたが、6月5日夜から傷の周りが赤く腫れて痛みが出てきました。

傷からの感染症、蜂窩織炎です。ナイロン糸を入れ替え、抗生剤(L-ケフレックス)を投与しました。
6月14日。

赤みやはれは良くなりました。

6月26日。

傷は内側から肉が上がってナイロン糸を入れるスペースもなくなりました。プラスモイストで覆っておけばあとわずかで治癒です。

傷は開口部が狭くて奥が深いほど感染を起こしやすくなります。奥に滲出液の淀みができると細菌のすみかになりますのでナイロン糸などを入れて流出しやすくしますが、それでも時として感染が起きてしまうので深い傷は注意が必要です。