2023年4月発行ニュースレター第48号「検診で腎臓が悪いと言われたら」

検診で腎臓について再検査となり受診される方が増えました。実は腎臓関連の検査の解釈は腎臓内科以外の医師は苦手にしている方が多いので、腎臓内科以外を受診しても明確な評価をしてもらえない場合が多いです。今回は検診で指摘されることの多いクレアチニンとeGFR、検尿の異常についてまとめました。


クレアチニン・eGFRの異常

クレアチニンは肝臓で作られたクレアチンが筋肉で使われたあとに老廃物としてできる物質で、腎臓から尿に排泄されます。腎臓の働きが落ちると排泄されにくくなり血液のクレアチニン濃度が上がります。したがって、クレアチニンが高いほど腎機能が悪いと言えます。ここで注意が必要なのは、筋肉がたくさんある人はクレアチニンがたくさん作られ、少ない人はあまり作られないということです。そこで男女差や年齢による違いを計算式で補正して、腎臓の働き(糸球体濾過量:GFR)を推測したのがeGFRです。こちらは90以上が正常で低いほど悪いと評価します。現在はクレアチニンの数字そのままではなくeGFRでの評価を重要視します。
検診ではeGFR60未満で再検査になるようです。eGFRは性別と年齢で補正しているだけなので、人より筋肉が多い人はクレアチニンが高く出てeGFRが低くなってしまう傾向があります。個人差が大きいのです。
クレアチニンによるeGFRが低く出ている方は、シスタチンCという検査で再検査します。シスタチンCは妊娠や甲状腺の病気以外では影響を受けにくく、筋肉量も影響しません。シスタチンCで計算したeGFRが良好な場合はクレアチニンのeGFRが少々不良でもほとんどの場合問題ないとされています。

検尿の異常

検尿でもっとも重要なのは尿蛋白です。腎臓の病気では血液検査で異常が出るより前に尿蛋白が出てきます。
±~+までは運動や発熱の影響で出ることもありますが、2+以上は進行性の腎臓病の可能性がぐんと高まりますので必ず精密検査を腎臓内科で受けるべきです。尿蛋白定量検査で数値で評価します。1日0.5g以上で慎重に経過観察、1日1gを超えていたら入院して腎生検などを検討する必要があります。
血尿は尿蛋白と一緒に出ていれば慢性腎炎の疑いで腎臓内科、血尿単独だと結石や腫瘍が疑われ泌尿器科の担当分野になります。

院長からもう一言

腎臓は肝臓と並んで沈黙の臓器と言われ、障害が起きてもなかなか症状としてあらわれません。

寡黙な腎臓の異変を最も早く知ることができるのが尿検査です。

尿蛋白が2+以上の場合は必ず腎臓内科を受診してください。腎臓内科以外の内科や泌尿器科では正確な評価はしてもらえません。せっかく検診で早期にみつかったのに、「これくらいは大丈夫」と言われて透析になってしまった患者さんを何人も見てきています。

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