2024年6月発行ニュースレター第55号「ワクチンで予防できるがんがあります」
がんは高齢者がなる病気という印象があると思いますが、子宮頸がんは30代~40代に発症のピークがあります。妊娠中に見つかって子供を諦めたり、子育て中の女性の命を奪ったりするためマザーキラーの別名があるほどです。年間3000名もの方が亡くなっている子宮頸がんは、ワクチンで予防できるがんですが、日本は先進国中で極めて接種率が低い状況になっています。
子宮頸がんワクチンとは?
子宮頸がんはヒトパピーロマウイルス(HPV)感染によって発症することがわかっています。HPVは男女ともに感染する可能性があり、性交渉の経験がある女性の50~80%は感染することが明らかになっています。約90%のHPV感染者は免疫によってウイルスが自然消滅しますが、女性の一部においてウイルスが長期的に残り続け、細胞が異常な形に変化して「異形成」をつくり、数年から数十年かけて子宮頸がんに進行します。子宮頸がんワクチンはHPV感染を防ぐことによって子宮頸がんのリスクを大幅に減らします。
ワクチンの効果と安全性
日本国内で流布している副作用に関する情報の多くは、科学的な根拠に基づかない誤った情報です。名古屋市で行われた研究でワクチン接種者と非接種者で健康状態に差がないことが証明されています。世界各国で子宮頸がんワクチンの接種により子宮頸がんの発症率が顕著に低下しており、オーストラリアでは今後10年で子宮頸がんはほぼ無くなると予想されています。
接種のタイミングと方法
子宮頸がんワクチンは通常、10代から20代前半の女性に推奨されており、性行為を始める前の接種が効果的です。定期接種は小学6年生~高校1年生相当の年齢の女子が対象です。ワクチン接種は3回のスケジュールで行われ、通常、接種後に軽い注射部位の痛みや発赤が現れる程度で、重篤な副作用は非常に稀です。
【重要】キャッチアップ接種について
子宮頸がんワクチンは副反応が喧伝されて接種をためらってしまった方が多数いるため、定期接種の時期を逸した方も無料で接種できる救済措置があります。対象は平成9年度から18年度生まれの女性(令和6年度は平成19年度生まれを含む)で、今年9月までに接種を始めないと3回無料になりません。
院長からもう一言
子宮頸がんは若い患者さんが多く、小さなお子さんを残して亡くなることもあり、予防できるものならぜひ予防したい病気です。
ワクチンについては過剰に副作用を気にする風潮がありますが、医療行為というものはリスクと利益を秤にかけて利益のほうがはるかに大きいと判断された場合に行われています。
根拠のない風説に惑わされず、まだ接種していな女性がご身内にいらっしゃったらぜひ接種を勧めてください。本来男性も接種したほうが良く、補助がある自治体もあるほどです。
PDF版はこちら→第55号202406子宮頸がんワクチン
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医