2024年12月発行ニュースレター第58号「糖尿病の原因と対策」
糖尿病は初期のうちは全く症状がないため健診などで血糖が高いと指摘があってもなかなか受診に繋がらなかったりします。何年も治療せずにいると合併症が進んでしまい、元の健康な体には戻れなくなります。糖尿病は万病の元、必ず治療を受けるようにしましょう。
糖尿病の種類と原因
糖尿病にはいくつか病型がありますが、95%以上の方は2型糖尿病です。これは遺伝的素因と生活習慣が合わさって発症する皆さんが思い浮かべる「普通の糖尿病」です。遺伝については両親が糖尿病だと子どもが糖尿病になる確率は50%とされています。1型糖尿病は免疫の異常が原因の糖尿病で生活習慣とは関連なく赤ちゃんからお年寄りまで誰でも突然なる可能性があります。
人体には血糖を下げる仕組みは膵臓のβ細胞から出るインスリンというホルモンしかありません。インスリンがしっかり働くと必ず血糖は下がります。糖尿病はインスリンの作用不足の病気であると結論できます。1型糖尿病は免疫の異常でβ細胞が破壊されていく病気でインスリン分泌はゼロになります。2型糖尿病の場合は少し複雑で、インスリンの分泌が悪くなっている要素とインスリンの効きが悪くなっている要素が絡み合っています。2型糖尿病でインスリン分泌が悪くなるのはβ細胞の過労死が原因です。β細胞は特殊な細胞で、過労により死んでしまいほとんど増殖もしないので消耗品の細胞とも言えます。インスリンの効きが悪くなる原因は肥満と運動不足です。インスリンは糖を脂肪に作り変えることで血糖を下げるホルモンなのですが、体に脂肪が増えすぎるとそれ以上脂肪が作られにくくなってしまうためインスリンがあっても血糖が下がりにくくなります。
どうすれば悪化しないか
1型糖尿病の場合は残念ながらインスリンを注射で補ってあげる他に治療はありません。
2型糖尿病はβ細胞の過労を解消してあげることが重要です。甘いものだけでなく米・小麦・芋類などデンプンは消化したら全てブドウ糖になって吸収されるので、これらをまとめて糖質と呼びます。糖質過剰な食事を続けてきた結果が2型糖尿病なのです。大量の糖を処理するためにβ細胞はこき使われ続けますし、過剰な糖は脂肪になり肥満に繋がりますのでより多くのインスリンがないと血糖が下がらなくなり更にβ細胞の負担が大きくなります。まずは糖質を減らして、できれば運動もするのが糖尿病の治療の要点となります。
院長からもう一言
糖質を減らす糖質制限食はアメリカの学会では2008年に1年の期限付きでやって良いとされ、現在は無期限に行って良い事になっています。日本糖尿病学会は昨年まで糖質制限は行うべきではないとしていましたが、2024年5月のガイドライン改訂で「肥満患者で9~12ヶ月間なら行って良い」とアメリカに16年遅れで糖質制限を認める文言が入りました。
PDF版はこちら→第58号202412糖尿病の原因と対策
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医