202年2月発行ニュースレター第59号「アレルギーの話:食べ物を肌に塗らないで!」
近年、食物アレルギーの発症が増加しており、その原因のひとつとして「経皮感作(けいひかんさ)」が注目されています。経皮感作とは、皮膚からアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が侵入し、体がその物質を異物と認識してアレルギーを引き起こす状態です。国内では小麦の加水分解物を含む石鹸で多数の方が小麦アレルギーを発症した「茶のしずく事件」が有名です。
食物アレルギーの主な症状
食物アレルギーは、特定の食品を摂取した後に以下のような症状を引き起こすことがあります。
皮膚症状:じんましん・かゆみ・赤み・腫れ
消化器症状:腹痛・吐き気・嘔吐・下痢
呼吸器症状:咳・息苦しさ・喘鳴(ゼーゼーする)
全身症状(アナフィラキシー):血圧低下・意識障害・ショック状態
特にアナフィラキシーは命に関わるため、すぐに救急対応が必要です。
アレルギーの成立に重要な経皮感作
食物アレルギーは、必ずしも食べることで発症するわけではありません。人体には経口免疫寛容と言って口から入ったものにはアレルギーを起こしにくくする機構があります。スギ花粉症の舌下免疫療法はこの経口免疫寛容を利用してスギ花粉をアレルゲンと認識しなくするようにする治療です。逆に皮膚には異物をアレルゲンとして認識させる機構があり、アレルゲンが皮膚から侵入することで感作され、後にその食品を食べた際にアレルギー反応を起こすことが確認されています。乳幼児は皮膚バリア機能が未熟なため、特に注意が必要です。
経皮感作予防について
肌が荒れたり乾燥したりするとバリア機能が低下し、アレルゲンが侵入しやすくなります。保湿剤(ワセリンやスクワラン)を毎日塗り、しっとりした肌を保ちましょう。湿疹や赤みがあると皮膚の隙間からアレルゲンが入りやすくなります。症状がある場合は早めに小児科や皮膚科を受診し、適切な治療を行いましょう。ゴシゴシ洗うと肌を傷めるためやさしく洗い、洗いすぎに注意しましょう。 授乳や食事の後は、赤ちゃんの口や手、周囲の皮膚を清潔な濡れガーゼやぬるま湯で拭き赤ちゃんの肌に食べこぼしがついたまま放置しないようにしましょう。食事前に口の周りにワセリンを塗って保護するのも有効です。特に卵・牛乳・小麦・ナッツ類などのアレルゲンになりやすい食品に注意は必要です。
院長からもう一言
最新の研究では、「特定のアレルゲン摂取を遅らせるよりも、適切な時期に少量ずつ導入する方がアレルギー予防に有効」とされています。・離乳食開始(5~6ヶ月頃)には、卵・小麦・乳製品などを医師と相談しながら慎重に少量ずつ試してみることが推奨されています。
すでに感作されてアレルギーが発症している場合はアレルゲンは遠ざけなければいけません。食べていれば慣れて起きなくなるようなものではなく、専門医による厳重な管理下で行われる減感作療法という治療が必要です。
PDF版はこちら→第59号202502アレルギーの話
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医