2025年4月発行ニュースレター第60号「つらいお腹の不調、我慢していませんか?」

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome, IBS)は、腸に炎症や潰瘍などの異常が見つからないのに、腹痛や便通異常(下痢・便秘)が慢性的に続く病気です。日本の成人の10~20%にこの病気の症状があり、思春期から40歳代に好発します。緊張・ストレスで症状が出やすく、通勤通学・授業や仕事の際に支障が出てしまうことが多い病気です。


主な症状:腹痛と下痢と便秘の組み合わせが主症状で4つの方に分類されます

①下痢型:急にお腹が痛くなり、トイレに駆け込むことが多い。特に朝や外出前に悪化。②便秘型:お腹が張って苦しく、なかなか排便がない。排便後もすっきりしない。③混合型:下痢と便秘を交互に繰り返す。④分類不能型:上記に当てはまらない不定な症状。

共通する特徴:腹痛や腹部の不快感が排便後にやわらぐことが多い、ストレスや緊張で症状が悪化。検査では異常が見つからない。

男性は下痢型が多く、女性は便秘型、あるいは下痢と便秘を繰り返す混合型が多いです。

原因と診断

身体的、精神的ストレスにより腸が痙攣して過剰に収縮したり、ゆるむことができなくなり腹痛や下痢・便秘が起きます。また、脳および腸の感覚が敏感となり、運動の異常と感覚の異常が合わさり強い症状がでると考えられています。診断は症状から行いますが、血便を伴う炎症性腸疾患などとの鑑別が重要です。

治療

まずは、病気についてどのようにして症状が出ているのか理解することが重要です。その上で生活改善に取り組みます。規則正しい生活と適度な運動が排便のリズムを適正にします。食事は、便秘型の場合は食物繊維の多い食事、下痢型の場合は油の少なめな食事が勧められます。

薬による治療では、便を下痢便・硬い便どちらもちょうどいい便に調整するポリカルボフィルカルシウム(製品名ポリフル、コロネル)、腹痛や下痢がひどい場合に腸の過剰な運動を抑制する塩酸ラモセトロン(製品名イリボー)、便秘がひどい場合はリナクロチド(製品名リンゼス)がそれぞれの病態にあっています。いずれも量の調整が重要です。また、ストレスで悪化しやすいのでストレスをコントロールすることも重要になります。

院長からもうひとこと

過敏性腸症候群は生命にかかわる病気ではありませんが、思春期から壮年期に多い病気で緊張するテストや会議の時などに症状が出ると大変困ります。生活改善のみで症状が改善しない場合はいずれの薬も副作用の少ない薬ですので試してみるのが良いと思います。

過敏性腸症候群の症状を完全に消失させることはむずかしく、完治を目指すとそれ自体がストレスになり悪化させますので、生活に支障がない範囲にコントロールできれば上々と考えるようにしましょう。

PDF版はこちら→第60号202504過敏性腸症候群