2025年6月発行ニュースレター第61号「病は口から出て口から入る」
テレビでコロナの話を聞かなくなった代わりに、百日咳や感染性胃腸炎の流行が話題になっています。実はコロナもなくなったわけではなく毎年4万人近い人が亡くなっています。
コロナが流行り始めてからあらためてわかったことは「感染予防の基本はマスクである」ことです。コロナで皆がマスクを付けていたときはコロナ以外の感染症が激減していました。
最近の感染症の動向
コロナは報道されていませんが7月の夏のピークに向けて増え続けています。検査を受ける人が減ったので患者数は当てにならず、札幌市などが行っている下水のウイルス量測定が実際の患者数と合致しているようです。4月から5月にかけてアジア・オセアニアではNB1.8.1という新しい株のコロナウイルスが増えています。免疫回避力が非常に高く、「カミソリを飲み込んだような喉の痛み」が特徴です。百日咳も流行が続いていますが、ワクチン接種前の新生児が感染すると命に関わります。嘔吐下痢を起こす感染性胃腸炎も集団発生のニュースが続いていますが、ノロウイルスは唾液の飛沫で感染することがわかってきています。これらはいずれも「口からばらまかれ、口から入ってくる」病原体が原因で、「うつさず、うつされない」ためにマスクが重要です。
マスクの効果
感染している人が呼吸をするだけで病原体が排出されますが、咳やくしゃみをするとさらに大量の病原体が広範囲に撒き散らされます。それを吸い込むことで次々に感染が広がります。マスクをすると撒き散らされる病原体が20%に減り、吸い込む量も30%に減ります。感染者・非感染者双方がマスクをすることで何もしないときの6%まで病原体の移動を減らせるということです。ただし、ウレタンマスクや布マスクはかなり性能が劣りますので不織布マスクをする必要があります。うがい、手洗いはマスクをしっかりしたうえでの追加の対策に過ぎません。
マスクの正しい使用法
不織布マスクは鼻のところにワイヤーが入っていますのでフィットするように曲げてできるだけ隙間ができないように着用します。鼻を出していては意味がありません。スーパーやコンビニ、バスや電車など換気が悪く人が多い場所では必ずマスクを着用するようにしましょう。病気の人が集まる病院でもマスクは必須です。
院長からもうひとこと
これからコロナ流行の主体になるNB1.8.1株は重症化率はそこまで高くないようですがこれまでの株を抑え込むほど感染力が高いようです。コロナ感染症は高齢者などでは未だに死亡リスクがありますし、若い人では後遺症が問題になります。3回かかると4割に後遺症が残ります。一度罹ると2年ほど影響が残るので年1回かかったりしていると高確率で知的能力の低下などの後遺症が起きてしまいます。ワクチンとマスクでかからないようにすべき病気です。
PDF版はこちら→第61号202506病は口から出て口から入る
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医