2025年10月発行ニュースレター第63号「足は第二の膀胱です」

「夜トイレに2時間おきに起きてぐっすり眠れない。昼間はあまりトイレにいかない。」

このような症状をよくお聞きします。頻尿の原因には膀胱が過敏になる過活動膀胱、前立腺肥大症などがありますが、いずれも昼間も症状がある病気です。夜間だけの頻尿の原因は足のむくみのことが多いです。昼間のむくみは尿になるはずの水分が足に水が溜まった状態なのです。


足のむくみと夜間尿

直立歩行をするようになった人間にとって足のむくみは宿命です。重力によって水分が足の方に偏って分布していきます。足の筋肉を動かすとポンプ作用で水分が上に押し上げられむくみにくくなりますが、1日ずっと座っていたりあまり歩かず立ちっぱなしだと水分は足に溜まっていきます。女性の場合はホルモンバランスの関係で若い人でも夕方に足がむくむ人は多く特発性浮腫といいます。高齢者では筋肉量と運動量の減少で男性でも足がむくみやすくなっており沈降性浮腫といいます。本来余分な水分は腎臓から尿として排泄されますが、足にむくみがある場合は上半身は脱水傾向になるため尿は作られにくくなります。本来尿として出ていくはずの水分が足に溜まっていることになり昼間はあまりトイレにいかないようになります。足は第二の膀胱なのです。
夜寝た状態になると足に溜まっていた水分が体の方に戻ってきますのでそれが尿になり夜に何度もトイレに行くことになります。

むくみへの対策

むくみを悪化させるのは水分ではなく塩分です。塩分を取りすぎるとそれに見合った水分が体にたまる仕組みになっています。むくみ対策の第一歩は塩分制限です。味噌汁などの汁物は飲まないようにして、何にでも醤油をかけるのはやめましょう。心臓病・腎臓病でなければ水分制限は意味がありません。朝から座りっぱなし・立ちっぱなしだとむくみますので、昼休みや午後に足を上げて横になることでそれまでのむくみをリセットできます。横になることができない場合はむくみ予防の着圧ストッキングを履くとかなり軽減できます。着圧ストッキングは静脈瘤の悪化予防にも有効です。
生活改善で良くならない場合は五苓散という漢方薬を使うこともあります。

 

院長からもう一言

浮腫があるといって何も考えずに利尿薬を処方されているのを見かけることがありますが、心不全、腎不全、肝不全以外では利尿薬は禁忌に近いです。特に女性の特発性浮腫では禁忌扱いで、ミネラルバランスの狂いを生じ、やめたときの反動も高度です。薬を使うとしても五苓散までにするのが安全です。

また、男性の夜間頻尿は前立腺肥大が関係していることが多く、むくみ対策と同時に前立腺肥大の治療が必要な場合が多いです。

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