2025年8月発行ニュースレター第62号「マダニはあなたのすぐそばに」

10年ほど前からマダニからうつるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)という病気が話題になっています。致死率25~30%の恐ろしい病気で、年々報告される患者数が増えており今年は8月10日の時点で135名と過去最高になっています。診断技術が向上してSFTSと確定診断できるケースが増えていることもありますが、マダニの生息圏が拡大していることも一因のようです。

SFTSについて

SFTSはマダニに刺されることでマダニが持っているSFTSウイルスに感染することで発症します。症状は高熱と倦怠感で、名前のとおり血液中の血小板や白血球が低下するのが特徴です。重症化すると意識障害や肝障害・腎障害が起きて死亡することがあります。抗ウイルス薬のアビガンが治療薬として承認されています。潜伏期は6~14日で、山などで野外活動をして1週間後くらいから発熱した場合には注意が必要です。

マダニの生息域

マダニは野生動物に付着して生息域を拡大しています。また、春から秋にかけて活動しますが温暖化により活動時期が長くなっています。マダニは野生動物が通る事がある場所の地面や草むらに潜んで、人や犬や猫が通る際にかなりの速度でくっつきよじ登ってきます。山ではなく畑などでの感染例も多いので注意が必要です。

SFTS対策=マダニ対策

野外活動をするときは長袖長ズボンで肌を露出しないことが重要です。靴も長靴や足首まであるような靴でズボンの裾を靴にいれることが推奨されます。服の上から更に虫避けスプレーをかけることも有効です。マダニが皮膚に噛みついているのを見つけたら無理にとってはいけません。マダニに体内のウイルスを人体に押しこんでしまったり、頭の部分だけ食い込んで残ったりします。皮膚科に安全にマダニを除去する器具がありますので受診してください。散歩中の犬にマダニがつくこともよくあり、放し飼いの猫もマダニがついてきます。SFTSウイルスは人、犬、猫以外の哺乳類には感染はしますが症状は起こさないとされています。逆に、SFTSを発症した人や犬や猫から人に感染した事例の報告があり、今年も猫からうつった獣医さんが亡くなっています。マダニがつかないように猫は完全室内飼育、犬は散歩で草むらに近寄らずノミ・ダニ予防の薬を使ってあげましょう。

院長からもう一言

山のそばまで住宅地として開発されたり、気候変動があったりで野生動物の行動にも変化が起きています。鹿がよく現れるようになったところで草むらに大量のマダニがいたという話も聞きます。温度は高いほうがマダニが活発で患者数も西日本が圧倒的に多いです。SFTSは患者の報告数は少ないですが致命率が高く増加傾向にある病気ですので、できる対策はしっかり行っていきましょう。

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