2020年8月発行ニュースレター第32号「耳鳴りの消し方」

周りで音がしていないのに耳の中や頭の中で音がする感覚、それが耳鳴りです。医学的には耳鳴(じめい)といいます。耳鳴りに悩んでいる方は全人口の15~20%、65歳以上の高齢者に限ると30%にのぼります。耳鳴りのほとんどは原因不明ですが、時に危険な原因がある場合もあります。

耳鳴りのメカニズムや危険な耳鳴りの見分け方、耳鳴りを軽くする方法についてまとめました。


 

稀だが注意すべき耳鳴り:原因がある耳鳴り

片方の耳だけ聞こえる耳鳴り:中耳炎や突発性難聴など、耳自体に異常がある場合です。

耳鳴り以外の神経症状がある:手足の麻痺やしゃべりにくさ、飲み込みにくさなどがある場合は脳の病気です。

めまいと難聴を伴う:メニエル病の可能性があります。

聴診器などで他人にも聞こえる耳鳴り:血管の病気の可能性があります。

ほとんどの耳鳴りは脳のボリューム調節障害が原因

ほとんどの耳鳴りは難聴が基礎にあります。難聴で耳から音が入ってこなくなると、人間の脳は音がしないことをおかしいと認識し、脳内で音が聞こえるような錯覚が生じます。これが耳鳴りの基本ですが、厄介なことに人間の脳は、聞きたい音に対して脳内でボリュームを上げるような動作をしてしまいます。例えば、にぎやかな会合の場で、話している相手の言葉はよく聞き取れて、周りの雑音があまり気にならないのも脳内でのボリューム操作のおかげです。よく聞き取りたい音ほど脳内でボリュームが上がるようになっているのです。そのため、耳鳴りを気にし始めると脳はどんどん耳鳴りのボリュームを上げてしまいます。

治療法

難聴が基礎にありますので、耳鼻科で聴力などの検査を受け、補聴器を使うのが有効です。耳鳴りよりも大事な音がしっかり聞こえれば耳鳴りのボリュームは下がっていきます。夜など静かなときに耳鳴りは気になるものですが、様々な音を含むホワイトノイズやしずかで好みな音楽などを流しておくと効果があるとされています。聴力が落ちている周波数帯(音の高さ)の耳鳴りがするとされており、いろいろな周波数帯をカバ-するように設計された音を流せる補聴器もあります。耳鼻科でしっかり診断を受けた上でいろいろな方法を組み合わせることになります。

PDF版はこちら→第32号202008