症例65:太もものやけど

35歳女性。1周間前に鍋のお湯をこぼして左太ももをやけどされました。皮膚科でリンデロンクリームを塗ってガーゼを当てるように言われたそうですが、ネットで調べてリンデロンとフィルムで覆っていたとのことです。やけどに黄色い膜ができ、それが取れたら痛みがひどくなったとのことで、1月27日当院を受診されました。

1月27日。

左太もも前面に2度のやけどを認めました。水ぶくれの皮がかなり残っています。

取れる範囲で取りました。
内側にはまだクリームが残っていました。有害なのでぬるま湯で流して取りました。

範囲が広いのでワセリンを塗ったズイコウパッドで覆いました。

家でも毎日ぬるま湯で流して付け替えてもらいます。

1月30日。

上の方は上皮化してきています。深い2度の部分はなさそうできれいに治りそうです。

痒みや痛みはまだあるとのことです。

内側の方も順調です。
2月7日の左太もも前面。

すっかり治っていました。

内側もきれいに治っています。色素沈着を軽度認めましたのでシナールをしばらく内服していただきます数ヶ月でほとんどわからなくなると思われます。

やけどしたあとに、ご自身で調べてガーゼをやめられたのはとても良かったです。リンデロンは軟膏(基剤がワセリン)なら良かったのですがクリームだったのでやけどには良くない処方でした。リンデロンクリームを塗ってなければご自身の治療だけで治っていたかもしれません。傷ややけどにはなにか薬を塗らないといけないという強迫観念がある医者が多いですが、かえって害を与える結果となります。目に入れるのをためらう薬は傷ややけどにもつけてはいけません。

また、黄色い膜はやけどの治療中によくできます。湿潤治療をしている医師でも取るという意見が多いですが、取るとかなり痛みが出ますし、取らなくても治癒過程にはほとんど影響ないと思われますので当院では取らずに経過を見ています。