2023年6月発行ニュースレター第49号「寝たきり予防にもっともっとタンパク質を!」
サルコペニアとフレイルという言葉をご存知でしょうか?サルコペニアとは「加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下」、フレイルとは「加齢に伴い身体の予備能力が低下して健康障害を起こしやすくなった状態」と定義されています。サルコペニアがあれば運動量が減り、食欲不振でさらに筋肉が落ち低栄養でフレイルが進行していくという悪循環に陥ってしまいます。そのままだと徐々に体力低下、あるいは転倒による骨折などで寝たきりになったりしてしまいます。
サルコペニアとフレイルの診断
サルコペニアの診断は握力や歩行速度などの測定で行われますが、簡単な自己診断の目安は
①横断歩道を青信号の間にわたりきれない
②ペットボトルや瓶の蓋が開けにくい
③ふくらはぎを両手で掴むと隙間ができる
の3つです。更に痩せが加わると可能性が高くなりますが、運動しない肥満の人は体重が重くても筋肉が減るサルコペニア肥満の可能性がありますので油断できません。
フレイルの診断はサルコペニアに加えて
④いつも疲労感がある
⑤あまり動いて回らなくなった
の2つがあると可能性が高いです。
サルコペニアとフレイルの原因と対策
20歳ごろの最大筋肉量に比べて40歳ごろから筋肉量の減少が生じ、70歳時には30%の低下が見られ、筋肉は10年間で6%ずつ減っていくとされています。その原因ははっきりしていませんが、低栄養と運動不足の関与が大きいと推測されています。
栄養の中ではタンパク質の関与が大きく、たくさんタンパク質を食べている高齢者は筋肉量が維持されやすいことがわかっています。運動をすることで何歳でも筋肉を増やすことは可能ですが、高齢者では若者以上に高タンパク食を摂らないと筋肉はつきにくくなっています。
推奨されるタンパク質の量は体重1kgあたり1~1.2gです。お肉100gにタンパク質は20g前後含まれているので、体重50kgの人が1日に60gのタンパク質を摂るためには毎食100gのお肉を食べないといけません。卵は1個7gのタンパク質を含みます。おやつにプロテインを飲むのもとてもおすすめです。紙パックのプロテインはスーパーやコンビニで売っています。
運動はウォーキングもいいですが、レジスタンス運動と呼ばれるスクワットなどが筋肉を増やしやすいです。運動後タンパク質をしっかり摂らないとかえって筋肉が細っていきます。
米と味噌汁と漬物という食事は寝たきりへの片道切符です。卵、肉、魚、豆腐を食べられるだけ食べましょう。野菜は少しで十分です。
院長からもう一言
腎臓が少し悪いとすぐタンパク制限させようとする傾向がありますが、高度腎機能がある場合にわずかに透析導入を遅らせるだけでほぼ意味はありません。腎臓以外の全身が弱って行き寿命は縮みます。まさに透析導入をやせ我慢しているだけと言って良いでしょう。
サルコペニアはビタミンD欠乏も一因とされています。しっかり日光を浴びるとともにビタミンDサプリもおすすめです。5000単位(125μg)で血中濃度が適正に保たれます。
PDF版はこちら→第49号202306寝たきり予防にもっともっとタンパク質を!
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医