2023年10月発行ニュースレター第51号「朝起きられないのは起立性調節障害では?」

中学~高校の子供さんで、夜遅くまで寝付けず朝起きられない方はいませんか?

朝なかなか起き上がれず起きても頭痛・腹痛がしたり体がだるくて学校に行けないのですが、昼からは元気になって普通に動けて夜はなかなか寝付けず夜更かしになってしまうため、生活習慣が悪いとか怠けているとか周りに言われてしまいがちです。心の病気と間違われたりもします。

この症状は「起立性調節障害」という歴然とした体の病気です。


起立性調節障害とは

起立性調節障害という病気は日本小児心身医学会が提唱している病気です。中学生の10%に認められ、学校にいけなくなる重症例は1%です。学年に1~2人は学校に行けないくらい重症になるということです。
学会のガイドラインでは「起立時に血圧が低下し脳などへの血流が減少して症状が出る」のが病気の本体で、血圧を上げる薬や規則正しい生活が治療としてあげられています。実際に大きな病院などでは症状+起立時血圧検査で診断し血圧を上げる薬で治療が行われますが、治療の効果はあまりないのは学会も認めています。
一方で学会の努力で学校での病気の理解が進み、色々な配慮が得られるようになっています。

起立性調節障害は血圧の病気ではなく体内時計の異常です

この病気の特徴は「朝調子が悪く夕方からは元気になる」ことです。時間による症状の変化はなぜ起こるのでしょうか。体内時計がその答えです。睡眠医学の領域では睡眠相後退症候群という入眠時間が普通より遅くずれてしまい朝起きる時間も遅くなる病気があります。起立性調節障害=睡眠相後退症候群と考えると病態がすっきりと理解できます。体内時計が後ろにズレているので遅くまで寝付けず、朝はまだ脳が寝ている時間に無理に起こされることで頭痛や吐き気や倦怠感が生じます。普通に朝起きられる皆さんが午前3~4時頃に無理に起きて活動しようとすると同じ症状が起きます。血圧も寝ている時間は低下するものです。
なぜ体内時計がずれるかは不明ですが、元々人は遺伝的に体内時計が夜型や朝型にセットされていることがわかっています。元々夜型の人も社会に合わせて体内時計をずらせているのですが、二次性徴期に元の時間に戻ってしまうようです。成長などに伴う栄養失調が原因とする説があり、当院では栄養面の改善と体内時計に直接作用する薬による治療をあわせて行うことで早く症状を改善させやがて薬を卒業できるようにしています。

院長からもう一言

起立性調節障害という病気が広く知られたことで「怠けている」等と学校で言われなくなってきていることは大変よいことですが、ガイドラインの疾患の捉え方と治療法が実情にそぐわないため「診断はついても良くならない」お子さんが多いです。体内時計は20歳過ぎからまた適応力が上がり自然に良くなっていくともされています。しかし、遅刻や欠席が続いて転校を余儀なくされたり、自信をなくしてしまったりしてから治っても遅く、積極的に睡眠医学的な治療を行い早く治してあげたいです。

当院のホームページに更に詳しい記事があります。

PDF版はこちら→第51号202310起立性調節障害