2022年10月発行ニュースレター第45号「こむら返りの原因と対策」

ふくらはぎの筋肉が突然ギューっと収縮して激しい痛みを起こすのがこむら返りです。こむら返りのこむらは腓と書いてふくらはぎの事を指します。とはいえ、ふくらはぎ以外にも足の裏や太もも手の指などにも起こります。若い方は運動時に経験することが多いですが、妊娠中や高齢の方では寝ているときに突然こむら返りが起きるようになり、睡眠の妨げになります。

こむら返りの原因

本来、筋肉の収縮は脳からの命令に従って生じます。筋肉と腱には、筋肉が過剰に伸びすぎたり縮み過ぎたりしないようにする仕組みがありますが、こむら返りが起きるときはこの仕組がうまく働かなくなっており、外からの刺激に過剰に反応して脳の司令に反して痛みを伴う筋肉の痙攣が生じるとされています。
運動中に生じるこむら返りはウォーミングアップ不足による筋肉の準備不足、脱水、疲労物質の蓄積が主な原因ですが、多量に発汗した場合に普通のスポーツドリンクのようなミネラル分の少ないものを飲んでいると特にナトリウム不足で全身の激しいこむら返りを生じることがあります(熱痙攣)。
夜中寝ているときに起こるこむら返りの原因の一番は脱水です。ミネラル異常も原因となりマグネシウム不足が多いとされます。また、足だけでなく手までしょっちゅう攣るという場合はカルシウムの代謝異常が疑われますが、特殊な病気以外でカルシウムが原因のことは少ないです。また、足が冷えるとこむら返りが起こりやすくなります。

こむら返りの対策・治療

こむら返りが起きたら縮んでいる筋肉を手でゆっくり伸ばしてしばらく保持すると治まります。
運動時のこむら返りは十分なウォーミングアップ、こまめな水分補給、発汗に応じた食塩の摂取で減らせます。
夜間のこむら返りは寝る前に水分補給し、夜中に目が覚めたときにも追加で水分補給をすると起きにくくなります。マグネシウム不足は血液検査では診断できませんが、マグネシウム豊富な玄米などを食べなくなったため不足している方が多いとされています。よく食べる食材では豆腐に多く含まれています。薬としてのマグネシウムは下剤としての作用が強く補充には使えません。クエン酸マグネシウムのサプリなどを活用しましょう。腎臓が悪い方はマグネシウムサプリは医師に相談してからにして下さい。足の冷えにも対策が必要ですが、湯たんぽなどによる低温火傷にはご注意下さい。

院長からもうひとこと

こむら返りに効果のある西洋薬はありません。
漢方薬の芍薬甘草湯は発作時に飲むとすぐに効果が出て、繰り返しこむら返りが起きるのも防いでくれます。芍薬甘草湯は筋肉の痙攣を止めてくれる薬なので、腸の筋肉の激しい動きで生じる下痢のときの腹痛や、尿管の筋肉の激しい動きで生じる尿管結石の痛みにも効果を発揮します。
欠点は甘草という生薬を多量に含むため、1日3袋を連用しているとむくみと血圧上昇が起きてきます。多くても寝る前に1袋、できれば攣ったときだけ服用するのが安全です。

PDF版はこちら→第45号202210こむら返り