2018年2月発行ニュースレター第17号「認知症の意外な症状」
認知症といえば物忘れ。確かに物忘れは認知症の中核となる症状です。昨日の朝ごはんになにを食べたか思い出せないのは正常範囲、食べたかどうか思い出せないのが認知症の物忘れです。ほかに買い物や料理の失敗が目立ったり騙されやすくなったりします。これらを中核症状と言います。
しかし、中核症状以外の認知症の症状はあまり知られておらず、ご家族が大変な思いをされていることがあります。
陽性症状(元気がありすぎる、過剰な反応がある)
怒りっぽい:昔に比べて些細な事で怒ったり、理解不能なタイミングで突然怒ったりします。
暴言・暴力:穏やかだった人が暴力的になったりします。
幻覚:はっきりとした人の幻覚が見えてパニックになったりします。
妄想:多いのは物忘れから起こる「物盗られ妄想」です。他に浮気妄想などがあります。
徘徊:昔に戻って「会社に行かなきゃ」とか「家に帰って子供の晩御飯を作らないと」と外に出ていき、道に迷ってしまいます。無目的に外に出るのではないのです。
過食:食べ物の好みが変わって(甘いもの好きになることが多い)、同じものばかり大量に食べたりします。
陰性症状(元気がなくなる)
無気力・無関心:何事も面倒になり「私はいいよ」が口癖になります。入浴などもしなくなります。
うつ状態:悲壮感にあふれてなにもしたくなくなります。
無言・無動状態:上2つが悪化するとなにも話さず、動かなくなります。
パーキンソン症状:歩くのが遅く歩幅が小さくなったり、体が傾いたり、むせやすくなったりします。
認知症薬の副作用で家庭崩壊
有名なアリセプト(ドネペジル)はとくに怒りっぽくなりやすい薬です。怒りっぽい認知症の人に使うと家族に怒鳴りまくるようになり家庭崩壊の恐れがあります。他のレミニールやリバスタッチパッチ(イクセロンパッチ)も量が多くなりすぎると怒りっぽくなります。陽性症状が強い患者さんには使ってもごく少量が望ましいです。
陽性症状も陰性症状もうまく薬を使うとかなり改善が望めます。お困りの方がいらっしゃればぜひご相談ください。
PDF版はこちら:第17号201802
つかもと内科 院長
平成5年鹿児島大学卒業
総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医