2020年10月発行ニュースレター第33号「PCR?抗原?抗体?新型コロナの検査について」

COVID-19(新型コロナ肺炎)は幸いにも日本では欧米などに比べて死亡者が少ない状態が続いています。衛生習慣や遺伝子の差、BCG等色々な要因に恵まれたようですが油断は禁物です。

コロナの検査には色々ありますが、馴染みのない言葉ばかりでそれぞれの意義などがわかりにくいと思います。コロナの検査についてまとめましたが、進歩が早いので現時点でのまとめになります。


PCR:最も信頼性が高い検査ですが時間がかかります

採取したウイルスの遺伝子を検査器械の中で増幅させて検出しやすくする手法で、ごくわずかな量のウイルスも検出できます。遺伝子の増幅に数時間を要する時間のかかる検査です。

インフルエンザ検査のように鼻の奥(鼻咽頭)に綿棒を入れて検査をしていましたが、くしゃみの誘発などで医療従事者側の危険が大きく、安全に自分で採取できる唾液や鼻の入り口(鼻前庭)を綿棒で擦ったものでも検査できるようになっています。ただし、発症後10日以降では唾液などでは検出率が下がります。また、陰性だとしてもその時点でウイルスが検出できなかっただけで、翌日には新たに感染してしまう可能性があり、安心が得られるわけではありません。

抗原検査:30分ほどで結果が出ますがPCRに劣ります

ウイルスのタンパク質を検出する方法です。インフルエンザの検査と同様の方法になります。特殊な器械を使って測定する定量法はPCR同様に鼻咽頭・唾液・鼻前庭の検体が使え、PCRにやや劣る程度の検出率です。

キットがあればどこででもできる定性法は手軽ですが検出率が低めのため、発症してから2~9日間の診断のみに使えます。鼻咽頭での検査が必要でしたが、最近鼻前庭での検査も可能になりました。

抗体:意義ははっきりしておらず、検査を受けるメリットはありません

抗体はウイルスに体が反応して作るものです。感染してから、IgM抗体は1週間、IgG抗体は2週間ほどでできてきます。色んな会社の検査キットがあり、血液で検査できます。ただし、抗体ができている状態は過去に感染していたことを示すのみで、現在の抗体検査のキットはウイルスを殺せる中和抗体を見ているわけではなく、陽性になっても免疫がついていることを示しているわけではありません。また、抗体は4~6ヶ月で消えていくこともわかっています。政府が行う疫学調査には役立つかもしれませんが、個人が測っても得することはありません。

院長からもうひとこと

新型コロナの検査は検査自体が感染を拡大させる可能性があり慎重に行う必要があります。また、新型コロナはすでに広く国内で拡散している状態と思います。この状態で無症状や軽症の感染者を掘り起こすことに意義があるとは思えませんので当院では自院での検査はもちろん、発熱外来などへの紹介もよほど疑わしい場合か入院が必要なほど重症な場合以外は行っていません。

PDF版はこちら→第33号202010