症例74「小児の花火による足の甲のやけど」

3歳男児。8月9日に花火から靴に引火し左足の甲をやけどしました。急患センターにて応急処置後、8月11日から近くの形成外科でフィブラストスプレー、プロスタンディン軟膏、ガーゼによる処置を支持され、8月16日からゲーベンクリームとガーゼで処置を受けました。

8月24日に植皮手術を勧められ、8月26日に病院に入院。9月1日に手術予定でしたが母親が付き添い中に心配になり、ネットで当院を見つけて8月31日に退院して当院を受診されました。

8月31日初診時の状態。

ゲーベンとガーゼというやけどを悪化させる治療を受けていた割に肉芽はしっかり上がってきていました。

以前の処置が痛かったのか、かなり怖がられてしまいました。

8月31日。

ワセリンつきプラスモイストで被覆しました。自宅で毎日ぬるま湯で流して付け替えてもらいます。

9月4日。痛みがなくなって走り回っていたそうです。

肉芽は良好で一部平坦になってきています。

同じ処置を継続。

 

9月12日。

肉芽は融合してていたんになり、周辺から上皮化してきています。

9月12日。

中央部の肉芽が盛り上がって過剰肉芽になっています。このままだと上皮化が止まりますので、リンデロンV軟膏を盛り上がったところに塗って平坦になるようにします。

9月19日。

周辺はかなり治りました。

9月19日。

中央部はまだ盛り上がっていますのでリンデロンV軟膏を継続。

9月26日。

肉芽も平坦になりかなり治ってきています。

リンデロンV軟膏は終了で、ワセリンつきプラスモイストは継続です。

10月3日。

中心部の3mmくらい残して完治です。治るまでワセリンつきプラスモイスト継続。治ったら1~2週ワセリンを塗って保護してもらいます。

やけどの痕が盛り上がってきていて、肥厚性瘢痕になってきています。運動制限などなく、経過観察です。

 

10月10日。

すっかり治りました。

肥厚性瘢痕は経過観察です。

翌2月27日。

やけどの痕が盛り上がってきたとのことで受診されました。

肥厚性瘢痕はありますが関節の可動域制限や運動の障害はなく、ドレニゾンテープでの治療を開始しました。

火炎によるやけどはほとんどが3度以上のやけどになります。初期治療が良くなかった割に初診時の肉芽の状態は良く、年齢が若いことでゲーベンガーゼの組織障害に打ち勝って肉芽が増えたのだと思われます。

植皮手術予定でしたが週1回・7回の通院で治癒しました。肥厚性瘢痕はできてしまいましたが知覚は正常で、体の他の部分にも傷をつけずに済みました。これは皮膚移植では絶対に望めないことです。お母さんがネットで湿潤治療を調べられたのが幸いでした。

肥厚性瘢痕は治癒後3ヶ月頃はピークで6ヶ月後には自然に小さくなる場合も多いです。運動に障害がなければ本格的な治療はいつでも間に合います。