症例14:幼児の両手のひらのやけど

1歳女児。4月14日朝ストーブの天板で両手のひらをやけど。病院で処置を受けた後、湿潤治療を希望されて受診されました。初診時は例によってガーゼと包 帯でぐるぐる巻きの「ドラえもんの手」状態でした。14日はまだ痛くて怖がっている状態でしたのでプラスモイストミトンにして翌日から処置を開始しまし た。

  4月15日処置前の右手。
手のひらの指側と指に水疱があります。ストーブ天板の端に手をついたのでしょう。
水疱は破れていて感染を起こしやすい状態で、除去したほうが良いです。
水疱膜(水ぶくれの皮)を無理ない範囲で切り取りました。
まだ怖がって泣いてしまう状況でしたので深追いはしません。
4月15日処置前の左手。
こちらは天板の平らなところに手をついたようです。
手のひらの手首側が一番深そうです。指にも水疱があります。
パンパンになっている水疱とすでに破れている水疱を処置しました。
プラスモイストをミトン上にしてすっぽり手を覆います。
中で指は自由に動かせます。自由に動かせることが重要です。
浸出液が多い場合は家庭でも取り替えてもらいます。簡単な処置ですので家庭でも大丈夫です。
4月17日の右手。
さらに水疱膜を除去しました。
先に水疱膜を除去したところは赤みが引いて、表面をフィブリン膜(タンパク質の膜)が覆っています。
4月17日の左手。
右手同様に水疱膜を除去しました。
浸出液が一番たくさん出る時期ですので手の平の正常な皮膚がふやけ気味です。
毎日洗っていれば問題は起きません。
4月19日の右手。
浅いところは上皮化(正常な皮膚ができること)が進んでいます。
この段階では手のひらのシワの所がやけどが深そうです。
4月19日の左手。
こちらも浅いやけどのところからどんどん上皮化しています。
上皮化が進むと浸出液が減ってきます。
左手は小指側の手首付近がやけどが深い感じです。
4月21日の右手。
深いところのほかはかなり上皮化が進みました。
手のシワのところが白っぽくて心配です。
4月21日の左手。
手首近くの深かった所のほかはほとんど治りました。
治りかけ、治りたての傷は乾燥しやすいのでワセリンを塗ったプラスモイストを当てます。
4月25日の右手。
シワの所も治ってきていますが、少し拘縮(ひきつれ)が起きないか心配な所見です。
4月25日の左手。
手首付近を残すのみです。
手のひらの一部を覆えば良くなったので、お母さんが赤ちゃん用の軍手を探してきて、指が出るように裁縫してくださいました。
手のひらのやけどにだけプラスモイストを当てて、軍手で固定します。指が自由に使えます。
保育園にも行けるようになりました。
5月1日右手。
すっかり治りました!
心配していた拘縮も起こりませんでした。
5月1日の左手。
こちらも完治です。
しばらくは治りたてで弱く乾燥しやすい皮膚ですのでワセリンなどで保護をしていただきます。

1歳になったばかりのお子さんの手のひらのやけどで、特に右手のやけどは拘縮を心配しましたが、幸い起こらずに治癒しました。
こ のお子さんも最初の3回位は処置のときに泣いていましたが、痛くないことをわかってもらえたようで、ニコニコと受診してもらえるようになりました。やけど で痛い思いをして、手が使えなくて嫌な思いをしているので、せめて処置は痛くないようにしてあげたいものです。湿潤治療なら、来るときニコニコ、処置中も ニコニコ、帰りもニコニコで終わります。