症例17:幼児の足の甲の3度熱傷

1歳男児。2週間前にアイロンで右足の後をやけどし、近くのクリニックで軟膏とガーゼで治療を受けていましたが、かさぶたが取れたら予想より深くてあとが残るかもと言われ、5月1日当院を受診されました。

  5月1日初診時。来院時の状態です。
ガーゼが当ててありました。
傷がからからになってしまう危険がある処置です。
5月1日のやけどの様子。
皮下組織に至る3度熱傷ですが、かさぶたと一緒に壊死組織も取れているため、後は乾燥させないようにすれば治っていきます。
乾燥気味でしたのでワセリンを塗って上からプラスモイストで覆います。
自宅で毎日ぬるま湯でさっと流して、ワセリン付きプラスモイストを当ててもらいます。
5分もかからない簡単な処置です。
5月6日。
表面がフィブリンという蛋白の膜に覆われていて見えづらいですが、きれいなピンクロの肉芽が上がってきています。
フィブリン膜は無理に取ると痛いのでそのままにします。
浸出液が十分出ているのでプラスモイストのみで覆ってもらいます。
5月13日。
周辺は治ってきていてやけどが小さくなっています。
大きくくぼんでいたやけどの中心も肉芽で埋まりつつあります。
この頃になると浸出液が減ってきて乾燥に注意が必要です。
5月20日。
やけどは中心を残すだけになりました。
治りかけになって浸出液がさらに減って、フィブリン膜が乾燥してかさぶたぽくなりました。またワセリン付きプラスモイストにしてもらいます。お風呂にゆっくり入ってフィブリン膜をふやかすようにしてもらいました。
6月3日。
治っていました!
少し痕が盛り上がっていますが、機能的にはまったく問題なく、今後目立たなくなるか様子を見てもらいます。
盛り上がってくるようならドレニゾンテープで気長に処置を行います。

最初の状態がどうだったかは不明ですが、受診時の状態は深い3度熱傷でした。深い2度以上のやけどはあとが残ってしまうことがあります。熱傷の深さは受傷時に決まりますが、水疱がある場合は水疱を取り除かないと深さは評価できません。
また、不適切な処置を受けると二次的に障害が深くなる可能性があります。ワセリン以外の軟膏や傷にくっつくガーゼなどを当てられたら速やかに転院を考えられたほうが良いです。