症例33:高齢者の低温熱傷

81歳女性。9月20日頃に貼るカイロがずれて右ふくらはぎを低温やけど。近くの医院で治療を受けましたが改善せず、皮膚移植が必要と言われて10月21日当院を受診されました。

           10月21日初診時。

やけどして1ヶ月たつのに壊死した皮膚がそのままでした。壊死した皮膚が残っているのは異物が食い込んだままなのと同じで、そのままではいくら待っても治りません。

写真のように中央部に切開を入れました。ここから浸出液が出て壊死組織がふやけて除去しやすくなります。

ワセリン付きプラスモイストをあてました。入浴は自由にしてもらいます。食事でタンパク質をたくさんとるようにしてもらいました。

10月24日。

目論見通り壊死組織がふやけて取れやすくなっていたので痛みや出血がない範囲で切除しました。

10月28日。

壊死組織はさらにふやけて浮いてきました。

浸出液が多いのでワセリンはやめてプラスモイストだけあててもらいます。

ピンセットでつまんで引っ張るだけで全て取れました。
10月31日。

肉芽の色調も赤いいい色で、順調に傷が埋まってきています。

11月11日。

浸出液が多く、黄色いフィブリン膜(タンパク質の膜)が表面を覆っています。その下から赤い肉芽が元気に顔を出してきています。順調です。

これ以後はあまり処置はいりませんので1週間に1回の通院にしました。

11月25日。

周辺から傷が小さくなってきています。肉芽も良好に増えています。

12月9日。

肉芽で埋まって平坦になったところは皮膚がはってきています。白っぽいところがそうです。

12月29日。

さらに傷は小さくなってきています。

1月13日。

1月7日からワセリン付きプラスモイストに変更した所肉芽が盛り上がりすぎました。このままだと皮膚がはりませんので、リンデロンV軟膏を塗って肉芽を平らにします。

1月20日。

肉芽が平らになり一気に上皮化が進みました。中央部はまだ盛り上がっているのでそこだけリンデロンV軟膏を続けてもらいます。

1月29日。

すべて上皮化して治癒しました!

まだ薄い皮膚なので1~2週はワセリン付きっプラスモイストで保護、その後1ヶ月ほどワセリンで保護してもらいます。

低温やけどは正しい治療をすれば皮膚移植などしなくても治ります。たとえご高齢の患者さんでも、しっかりタンパク質を摂りながら正しい治療をすれば治ります。この患者さんでは壊死した皮膚をもっと早く除去できていれば更に速く治癒したと思います。

病院勤務時代はおしりの直径10cm以上の骨が見えている褥瘡も湿潤治療と高タンパク食で治してきました。それだけの褥瘡でも半年で治っていましたので、低温やけど程度の傷は確実に治ると思っています。