症例41:指の犬咬傷

74歳女性、他院で糖尿病治療中。5月21日夜に飼い犬に左手の人差し指を噛まれ、21日に当院を受診されました。指の手のひら側(指腹側)と甲側(指背側)に噛み傷がありました。

 

  5月22日。

指背側の傷。

傷口は乾いて閉じていましたが、中に膿が溜まった所見がありました。

指の根元から麻酔をして傷の内部を洗浄しました。

傷口が閉じで膿が中にたまるのが一番良くなく、ナイロンの糸をこより状にしたものを差し込んで膿が出やすいようにします。

夏井先生のサイトに詳しく書いてあります。

この上からプラスモイストで被覆しました。

指腹側の傷。

こちらも同様に内部を洗浄しました。

ナイロンの糸を差し込んで固定。プラスモイストを当てます。

抗生剤も処方、破傷風トキソイドの注射を行いました。

このあとは日曜以外は毎日処置に通院されました。

5月23日の指背側。

指の腫れは持続していますが、膿はしっかり出せていました。

前日夜は38.6℃の発熱があったそうです。

同じく指腹側。

しっかり排膿できています。

5月29日の指背側。

発赤がなかなか治まらず、ナイロン糸が抜けていましたので念を入れて2本入れ直しました。

抗生剤も継続しました。

同じく指腹側。

浸出液も出なくなり、ナイロン糸は抜去しました。プラスモイストは継続。

5月31日の指背側。

赤みが減ってきています。

同じく指腹側。

かなり治っています。

6月2日の指背側。

膿は出なくなり発赤も殆どなくなったのでナイロン糸は抜去しました。

同じく指腹側。ほぼ治りました。
6月4日の指背側。

発赤なく治ってきています。

同じく指腹側。

傷は治っていますが、指の付け根に発赤があります。抗生剤の種類を変えて再開しました。

6月12日の指背側。

傷としては治癒しています。

同じく指腹側。

まだ少し発赤はありますが、抗生剤で対応可能と考えました。

これで治療終了としましたが、発赤の悪化なく治癒されたそうです。

動物の噛み傷は大変化膿しやすいです。ヒト>ネコ>イヌの順で化膿しやすいと言われています。

化膿予防には消毒しても無意味で、傷の奥に浸出液や菌が溜まったままにならないように排膿する(ドレナージ)必要があります。傷の口が閉じないように、傷の奥から傷の外に液体を導くものを入れる必要があり、今回はナイロンの糸を使いました。

ドレナージをしてもなかなか発赤が治まらず治療に難渋しましたが、患者さんが糖尿病をお持ちだったことが一因と思われます。糖尿病患者さんでは感染が重症化しやすく、注意が必要です。