2021年12月発行ニュースレター第40号「喘息治療は発作ゼロが目標です!」

気管支喘息(喘息)は子供の病気と思われがちですが、小児喘息は成長とともに治ることも多く、大人の喘息の多くは大人になってから発症します。そして患者数は昔より増えています。

喘息の発作はゼイゼイ、ヒューヒューという音(喘鳴)を伴って呼吸が苦しくなります。夜間や早朝に起こりやすいのが特徴です。発作のときに気管支を広げる吸入薬を使うと呼吸が楽になりますが、この薬だけに頼っていると危険であることがわかっています。30年前とは全く様相が変わった喘息治療についてまとめました。


喘息は発作がないときもくすぶっています

喘息患者さんでは発作がないときも肺の中の空気の通り道(気道)に炎症が起きています。火事で言えば火種がくすぶっている状態です。気道は刺激に過敏な状態になっており、感染やタバコ、アレルギー源などの刺激を受けると過剰に反応して収縮し空気が通りにくくなってしまいます。これが喘息発作です。

日本呼吸器学会HPより

 

メプチンやサルタノールなどの発作用の吸入薬は収縮した気道を広げてくれますが、炎症には作用しませんので根本的な治療にはなりません。たくさん使うほど死亡率が高くなることがわかっています。これは喘息発作を起こすたびに少しずつ気道に悪い変化が起きて積み重なっているからと考えられています。

喘息の基本治療

気道の炎症を抑えることができる喘息の基本治療薬は吸入ステロイドです。吸入ステロイドは気管の表面でのみ作用し、吸収されるとすぐ分解されて全身に作用を起こさないように作られていますので、内服のステロイドのような全身の副作用はほとんどありません。毎日きちんと吸入することで気道の炎症が改善し発作が起きなくなり、気管の悪い変化も防げます。日本の喘息での死亡者数は吸入ステロイドが発売されて普及するにつれてどんどん減っており、1990年代の7000人から1700人前後になっています。

「苦しくなったらプシュッと吸えば大丈夫だから」という考えはとても危険です。全く発作が起きない状態を目指して、正しく吸入薬を使用していきましょう。

院長からもう一言

風邪を引いたあとに頑固な咳が1ヶ月以上続くときは、喘鳴を伴わない咳だけの喘息「咳喘息」の可能性があります。咳喘息は本当の喘息に移行する場合があり吸入ステロイドでの治療が進められます。

PDF版はこちら→第40号202112喘息